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私さ、音大の声楽科卒業して、それでちょろっとイタリアに留学してたんだけど、後援者っていうの？パトロンができたの。
もちろん、日本人。イタリアのとある町にいたんだけど、たまたまちょっと小さいコンサートに出演したのね。その時に、その人が見にきてて。
それで、日本人同士ってことで、話して、食事に誘われて、それで、一緒に食事して。
それからなんか、その人から連絡もらうようになってさ。
その後、私は日本に戻って、やっぱり小さいホールなんかで歌う程度のちょろっとした仕事しかもらえなくて。
だけど、その人、私の後援者気取りで色々仕切るようになってきて。
確かに、ご縁はあったよ、だけど、ここまで私の生活にずかずか入りこまれると、なんか不愉快でさ。
それで、とうとう告白されてしまって、丁重にお断りしたら、今度は嫌がらせみたいなことをしてくるようになって。
後援者って、確かにこういう仕事してると必要だなって思うことはあるよ。
実際に、プロの歌手の人たちには後援者ついてるし。そういう人がいなかったら、歌手なんてつづけていけないっていう世界もあるんだろうけど。
私の場合はさ、ちょろっと歌って、ちょろっとお金もらって、それで、普通の、私が好きになった人と結婚して、「昔は歌手だったのよー」なんて言いながら、近所のおばさんたちに歌教える程度の人生でよかったのよ。
後援者の人と付き合うとか結婚とか、そういうの考えてなかったよね。っていうか、そもそも、私が甘いのかもしれないけど、後援者っていうなら、私の才能を買ってくれる人がよかった。
私とあわよくば付き合って結婚なんて下心で近づいてきてほしくなかったな。
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