パトロン契約

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僕がこの話を明かせば、ちょっとしたスキャンダルになるかもしれない。
かつて、僕がパトロン契約をしていた彼女は、今では某国民的アイドルグループの看板スターなのだ。
こう言う話をすると「アイドルの下積み時代を援助して支えた」美談を想像されるだろう。
しかし、実情は全く異なる。彼女は入団直後から、次代のエースとして期待されていた逸材だった。
お金についても、事務所から相当額をもらっていて生活には不自由していなかったはずだ。
だから、パトロン契約などは無意味であり、ましてや、カラダを金で売る必要は全くなかったと言える。
そんな彼女が、パトロン契約と言う名の売春をやっていた理由は、正直、僕にはわからないし、僕と彼女も普通にパトロン契約のサイトで出会っただけだ。
その時は、僕は彼女を知らなくて「アイドル顔負けな子が来たな、ラッキー」くらいにしか思っていなかったが、普通に生活をしていても、テレビやネットなどで彼女の姿が目に入る機会が増えてきた。それでも、まだ、「よく似た子がいるものだ」くらいの認識だったのだ。
ベッドの中で「キミ〇○に似ているよね」などと言うと「そうじゃなくて、〇○が私に似ているんだよ」なんて軽口を聞いて来たりしたっけ。
彼女がそのアイドルと同一人物だと気づいたのは、関係が途切れた後だ。
雑誌のグラビアで水着姿になったそのアイドルを見た時、僕が抱いていた彼女と全く同じボディラインがそこにあったのだ。
それでもまだ、人気アイドルとパトロン契約でセックスしていたなんて、あまりにも現実離れし過ぎていて僕は信じられなかった。
そこで、僕は疑念を晴らすべく、彼女との握手会に参加してみた。
さすがに人気者だけあって握手会には長蛇の列ができており、僕が彼女と握手できるまでかなりの時間待たされた。
そして、僕の順番になり、僕の姿を見た彼女は「久しぶりですね」と、事実を隠そうともせず声をかけてきたのだ。
もちろん、公の場所でパトロン契約のことを言うはずもなかったが、「最近忙しくなっちゃって」と会えなくなった理由も教えてくれた。
もう、ここまで来て否定することはできない。僕は、間違いなく人気アイドルとパトロン契約していたのだ。
この話をすると「何て羨ましい」と思われるかもしれない。しかし、今の僕には、ばれた時の恐怖しかない。
列をなす人気アイドルのシンパが、一斉に僕に襲い掛かってくる想像しかできなかったのだ。
彼女の正体を知らなかった方が、どれだけ幸せだっただろう、と僕は思った。
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